美少女ゲームの変移、ビジュアルノベルの確立

美少女ゲームの変移、ビジュアルノベルの確立

 ○ 美少女ゲームの歴史、ビジュアルノベルの確立

 ・ 1996年までの萌え文化

 コナミの「ときめきメモリアル」やコンシュマー化されたelfの「同級生」シリーズなどが、家庭用ゲーム機のソフトとして普及し、恋愛ゲーム、いわゆるギャルゲーと呼ばれるジャンルが出てきた。
 また、「新世紀エヴァンゲリオン」のヒットから多角的なメディアミックスをするようになり、マスコミもまたアニメに注目するようになった。コスプレもここから急激に発展するようになった。

 そんな中、日陰者の文化である、アダルトゲームにも変化が出てきた。アダルトゲームを作る背景はコンシュマーに比べて倫理規定が低いため、色んな表現をすることができ、家庭用ゲーム機で高いライセンスと開発費を払うよりも、もっと安く作ることのできるパソコンゲームの方がコスト費のかからないのが理由であった。勿論、エッチなものを作りたいというのも理由の一つである。

 ・ 1996年のアダルトゲーム、ゲーム性のあるアダルトゲーム

 美少女ゲームの元となるアダルトゲームは1980年代からあり、大手ゲーム会社が開発したこともある。簡単なゲームとおまけ程度のエッチシーンで構成されていた。
 しかし、時代が90年代ごろになると、アダルトゲームにも当時のPCゲームのクオリティに近いゲーム性と、ストーリー性のあるシナリオがつき、アダルトゲームはファンタジーのある大人向けのゲームとして進化した。

 1996年当時、OSのWindows95が普及したことで、画像や音楽の技術向上し、記録媒体がフロッピーディスクからCD-ROMへと変化した。この頃のアダルトゲームはゲーム性のあるゲームが中心であった。

 「同級生」「ドラゴンナイト」シリーズなどを生み出したelfが1996年12月26日PC-98シリーズでSFアドベンチャーゲーム「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」が発売した。
 YU-NOは「DESIRE」「EVEシリーズ」を手がけた剣乃ゆきひろが企画・脚本・ゲームデザイン・総合プロデュースを務めたSFアドベンチャーゲーム。このゲームはアドベンチャーゲームの傑作であり、アドベンチャーゲームのゲーム性を熟した作品といっても過言ではない。
 並行世界をテーマにした作品は多いが、このゲームではその並行世界をマッピング(時間と行動によって分岐するため、枝葉みたいに分かれている)として表現し、そのマッピングにある宝玉(並行世界を行き来できるセーブ・ロードポイントみたいなもの)を回収するのが目的となる。このマッピングはアドベンチャーゲームの基礎となるチャートでもあり、ゲームクリエイターの間では、このYU-NOを参考にする人は多い。なお、セガサターンでコンシューマー化され、25万本超えており、YU-NOが与えた影響は大きいものだといえる。

 一方、「闘神都市II」や「DALK」などで有名なアダルトソフトメーカーアリスソフトは、1996年12月19日にランスシリーズの外伝、シュミレーションゲームの「鬼畜王ランス」を発売した。PC-98からWindows 95へとシフトする中、アリスソフトはどのメーカーよりも先駆けて、Windows 95専用ソフトとして発売した。
 アリスソフトのヒット作である「大悪司」「大番長」「戦国ランス」の元となる地域制圧型シミュレーションの一作目で、リーザスの王となったランスがパートナーのシィルを奪還するために好き勝手に暴れるゲームである。
 このゲームはこれまでRPGだったランスシリーズの外伝的な作品であり、ランスシリーズの正史とは関係ない。しかし、ランスになって好き勝手なことができる自由性と中毒性が高く、フリーソフト化した今でも人気が劣らない作品である。

 他にも、「Piaキャロットへようこそ!!」など、この頃からアダルトゲームは駄菓子のおまけのようなエッチでなく、大人でも楽しめるシナリオとゲーム性のあるゲームが売りであった。

 しかし、ある会社がアダルトゲームのインフラを変えることとなる。その会社は「ToHeart2」でおなじみのLeafである。

 ・ 「雫」がもたらしたビジュアルノベルの基礎

 「ToHeart2」や「こみっくパーティー」で有名のLeaf。Leafが成功をおさめるきっかけになったのはビジュアルノベルシリーズである。その第一弾として発売されたのが、1996年1月26日、PC-9800 MS-DOSで発売した「雫」である。

 当時、見せるのが主流であったアダルトゲームで、読ませるという新機軸を見出したビジュアルノベル。
 イベントCGの上に文字が流れるスーパーファミコンの「弟切草」や「かまいたちの夜」のようなシステムで、臨場感のあるBGMと効果音を耳にしながら、プレイヤーはオカルトに満ちた学園の秘密を知る。
 アダルトゲームならではの狂ったシナリオが売りで、また、すぐにHシーン(狂気に満ちたバッドエンド)にたどり着くことで有名である。ビジュアルノベルでありながらもゲーム性があるのはこのバッドエンドにあるといえる。プレイヤーはこのバッドエンドを迎えずに、学園の裏側を見ることができるのかいう緊張感をもたらすことができた。

 ・ 第二作「痕」
 
 1996年7月26日、PC-9800 MS-DOS専用ソフトとして、「痕」が発売された。前作の狂気シナリオの「雫」とは対照的に、「痕」は、柏木四姉妹宅で過ごす主人公柏木耕一が殺人事件に巻き込まれてしまうサスペンスストーリーである。
 「雫」とは違い、「痕」は日常シーンが多く、登場するキャラクターの個性が際立った。2009年には二度目のリニューアルが予定されているソフトでもある。

 ・ 「ToHeart」、アダルトゲームを大衆化した作品

 これまで「雫」や「痕」などダークな作品を作ってきたLeafであったが、ライトな雰囲気のある作品で多くの顧客を取り込むように製作されたのが1997年5月23日にWindows95・98用ソフトとして発売された「ToHeart」である。
 一癖も二癖もある美少女との充実した学園生活が描かれ、あらゆるキャラクター属性を網羅している。幼馴染、ロボっ娘、女友達、委員長、寡黙なお嬢様、外国人、体育会系、不思議少女、完璧超人などなど、一風変わった女のコたちとの交流をメインにしたビジュアルノベルである。

 「ToHeart」がもたらした影響は大きく、PSソフトとして発売されて、2回もアニメ化した。

 この作品によって、大人が楽しむアダルトゲームから若者でも楽しめる美少女ゲームとしての大衆化する流れとなっていく。当時のパソコン雑誌、「Techwin」や「LOGIN」など、一般人でもパソコン雑誌を手に取れば、美少女ゲームの情報を知ることができた。しかしそれは美少女キャラクターの記号化やゲーム性を損失したことのあらわれでもあった。
 だが、ゲーム性がなくても、CG、シナリオと音楽があれば、アダルトソフトメーカーとして進出することができるようになったことを暗示する。その結果、多くのアダルトソフトメーカーがこの手法を取り入れて、無数のメーカーがアダルトゲーム市場へと参入することとなった。

 ・ アリスソフトのビジュアルノベル「アトラク=ナクア」

 アリスソフトはLeafがビジュアルノベルに開拓をしたのを見て、アリスソフトも実験的な意味合いで、1997年12月18日Windows用ソフト「アリスの館4・5・6」の中にある一つの作品として「アトラク=ナクア」を世に出した。これまでアリスソフトのアドベンチャーゲームといえば、「AmbivalenZ -二律背反-」「DiaboLiQuE」であったが、「アトラク=ナクア」は読ませることにこだわった作品だといえる。

 主人公、比良坂初音は女郎蜘蛛であり、宿敵である銀との戦いから傷を癒すために、女生徒として学園に侵入する。あやかしの力で人の心を入り、人の精気や肉体を喰らっていく。

 「雫」や「痕」に似た伝奇シナリオ。エンディングまで一本道であり、ゲーム性にこだわるアリスとしては珍しいノベルアドベンチャーであるが、濃密なシナリオと耽美な音楽が話題となった。

 ゲーム性にこだわるアリスソフトがこのソフトを出したことで、ゲーム性を失ったアダルトゲームに対するテーゼだという考えを持つ者も少なくない。
 なお、アリスソフトが打ち出したビジュアルノベルはこれが最初で最後であり、この作品以降、ビジュアルノベルを出すアダルトソフトメーカーはなくなった。(ただし、「月姫」や「ひぐらしになく頃に」など同人メーカーがビジュアルノベルを出すようにはなった)

 だが、ビジュアルノベルは読ませる恋愛アドベンチャーゲームへと進化し、ゲームよりもストーリーを特化した美少女ゲームが発売するようになった。(美少女ゲームの定義は曖昧だが、ここでは美少女が出てくるアダルトゲームとギャルゲーを一つにまとめたジャンルとして取り扱うことにする)
posted by 宋江 at 01:23 | game | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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