Keyの始まり「Kanon」

Keyの始まり「Kanon」

 ・ 1996年を境に分かれる二つの道

 1996年を境に、美少女ゲームはゲーム性のあるゲームと、ビジュアルノベル風のアドベンチャーゲームの二つへと分かれていく。前者は性的描写が強い大人のゲーム、後者はシナリオを重点に置いたキャラクターゲームの色合いが強い。

 例えば、elfの1998年3月27日Windows用ソフトで発売された「臭作」は、女生徒を脅迫するいわゆる凌辱ゲームである。女性キャラクターに音声があることや、独特の男の美学を持つ伊頭臭作というキャラクターに魅力があったことなどから、異例の10万本を超えるヒット作である。だが、ゲームを進むに連れて、エロを目的としたプレイヤーに、これはゲームなんだという現実へと引き戻される痛いしっぺ返しが来ることで話題となった。
 基本的に、アダルトゲームは、ゲーム性のあるゲームでも凌辱描写がないと強い刺激にならない。それは性的嗜好を満たすことと以外にも、ゲームという自分の意志が反映される場で現実ではしてはいけない罪を犯すということでもある。それ以外にも、他の人間からの寝取られることがないように、美少女を守る強い“動機”を持つようになる。
 それ以外にも人間のイヤらしさを生々しく描くストーリー性のあるシナリオもまた、魅力的だといえる。アダルトゲームは凌辱をある程度取り入れなければ、良質のあるゲーム性とシナリオを生み出せず、そうそう魅力的なものが作れない。官能小説以外にも、性的嗜好に一定の文化性を持つようになった。
 ただし、この頃からCGの質もよくなったことで音声がついたことで、ゲーム性を極力省いた性的描写の多い美少女ゲーム(いわゆる抜きゲー)が発売されるようになってきたこともまた事実である。そういうのが発売される背景は開発コストやリスクが少なく、従来のアダルトゲームシナリオと比べてシナリオプロットが簡単であることと、パソコンを買う動機がエロ目的だった時代に、アダルトゲームはある程度売れることが最大の理由だといえよう。
 更に、Leafのビジュアルノベルシリーズのヒットで、その流れは加速化することとなった。美少女キャラクターに対する性的嗜好を持つ者が増えていくのであった。
 しかし、抜きゲーで儲けた利益分から、別のゲームを作る開発費にも回されることも忘れてはいけない。会社が倒れてしまったら、元も子もないからだ。大型作品や新たなジャンルを開拓する意味でもこの抜きゲーは、美少女ソフトメーカーにとって大切なプラットホームでもあるのだ。

 美少女ゲームがゲーム性のあるゲームとゲーム性が省かれたゲームの二つに分けられていく中、株式会社ビジュアルアーツはKeyを設立し、感動系恋愛アドベンチャーゲーム「Kanon」を生み出すこととなる。

 ・ Keyの処女作「Kanon」

 1998年、「ONE 〜輝く季節へ〜」を手がけたTacticsのメンバーが株式会社ビジュアルアーツへと移籍し、美少女ゲームブランドKeyが設立した。

 この頃のビジュアルアーツは、凌辱系や抜きゲーにこだわったブランドを所有する親会社である一方、実験的なジャンルを次から次へと開拓していた。
 例えば、当時、ビジュアルアーツの傘下であったスタジオメビウスは1996年4月「悪夢 -青い果実の散花-」や1999年9月10日「絶望-青い果実の散花-」を発売し、鬼畜系ソフトとしてのブランドを確立していた。恋愛モノも発売していたが、それほど話題に上がることはなかった。

 そんなブランドを所有するビジュアルアーツはTacticsのメンバーを迎えたことで、感動系恋愛ゲームを製作することとなった。

 Tacticsのメンバーを迎えてから1年後、Keyは1999年6月4日にWindows用ソフト「Kanon」を発売した。当時、話題作であった「ONE 〜輝く季節へ〜」のスタッフということもあり、多くのユーザーは「Kanon」に注目したこともあり、処女作にも関わらず、大ヒット作になった。場所が大阪ということもあり、Leafと並ぶ恋愛アドベンチャゲームのブランドとして認知されるようになった。 

 両親の海外赴任によって、叔母の水瀬家へと居候する相沢祐一。少年時代、この雪の街で過ごしていたが、今はその記憶がない。彼はこの街で学園生活をする中、5人の少女と出会い、夢を通じて幼い頃の記憶を取り戻していく。

 樋上いたるが描く個性豊かなキャラクターと、麻枝准が書く個性のあるキャラクター達との充実した日常と、それとはギャップのあるそれぞれのキャラクターが持つ宿命が「Kanon」の売りとなっている。

 「Kanon」は当時、美少女ゲームでは珍しいオープニングテーマとエンディングテーマがつき、オープニングテーマの「Last regrets」はカラオケになるほどの人気となり、美少女ゲームの主題歌として、一つのジャンルとして開拓することとなった。「Last regrets」はゲーム音楽専門のI'veの名前を広める曲にもなり、その後、音楽クリエイターたちの発展の場として、美少女ゲームで活躍するようになった。
posted by 宋江 at 01:24 | game | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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