ジャンルが多角化する美少女ゲームの中で生まれた「AIR」

ジャンルが多角化する美少女ゲームの中で生まれた「AIR」

 ・ 発展する美少女ゲームと児童ポルノの法的整備

 1999年、児童ポルノ法が成立し、児童ポルノの販売や製造、譲渡や販売目的での所持を禁じた。ただし、アニメやゲーム、マンガなどはそれに値しなかった。

 泣きゲーのヒットによって、美少女ゲームを取り扱う店が多くなり、流通ルートが広がりだした。美少女ゲームの本数が急激に伸びだし、1年間に400、500本が当たり前となった。

 AIRが発売した2000年は色んなジャンルが開拓され、様々なメーカーが現れる。ジャンルやボリュームが豊富になる中で、美少女ゲームの背景と共にAIRについて知っていこう。

 ・ 続出する泣きゲー

 「ONE 〜輝く季節へ〜」「Kanon」のヒットにより、美少女ソフトメーカーはシナリオにこだわった泣きゲーをテーマにしたソフトを作るようになった。
 1999年6月25日、D.Oから恋愛アドベンチャーゲーム「加奈 〜いもうと〜」、2001年11月2日同メーカーから「家族計画」が発売された。どちらも山田一がシナリオを書いており、泣きゲーのジャンルに入る。
 2000年8月31日、ねこねこソフトから「銀色」が発売され、2001年4月13日には「みずいろ」が発売している。この二つのソフトもねこねこソフトを代表するソフトであり、特に「みずいろ」はアンインストールしたら、HDD内のすべてが消えるという地雷があり、この頃から面白くないゲームやリスクがあるゲームは「地雷」という名称がつくようになった。
 一方、「加奈 〜いもうと〜」「銀色」のソフトは欝ゲーとも言われており、プレイヤーを欝にさせるゲームでもある。今まで、プレイヤーを欝にさせるゲームはあったが、それが欝ゲーと揶揄されようになったのはこの時期からである。

 ・ 欝ゲーの境地「君が望む永遠」

 2001年8月3日、美少女ソフトメーカー、アージュはWindows用ソフト「君が望む永遠」を発売した。
 第一章と第二章と分かれており、第一章が丸々体験版として配布していた。そして、第一章の最後にはとんでもないことが起こり、その先が気になるプレイヤーの心をつかむことに成功した。アージュのこの体験版戦略は「マブラヴ」にも続いており、他のメーカーも体験版戦略に注目させるきっかけとなった。

 気になる内容は従来の恋愛ゲームとは違い、逃げ場のない三角関係が中心であり、どの選択もプレイヤーには重たい選択肢で、プレイすると現実的に憂鬱になる“欝ゲー”のジャンルを確立し、精神的な重圧を味わう欝ゲーという分野が広まりだした。

 君が望む永遠は後にアニメ化とされており、OVAも発売されている。君が望む永遠は今までの美少女ゲームにはない、修羅場と言う現実を味わうことができた。


 ・ 魔法少女リリカルなのはの元ネタ「とらいあんぐるハート3」

 同じ三角関係で忘れてはならないのはWindows用ソフトの「とらいあんぐるハート」シリーズ(通称とらハ)。全シリーズを通して、都築真紀が企画、脚本、キャラクターデザインを手がけた作品でもある。1998年12月18日、「とらいあんぐるハート」がivoryから発売された。当時、恋愛学園モノが主流であり、この作品も市場にありふれた作品であっただが、丹念に練りこまれたキャラクターが人気を呼んだ。
 1999年7月30日「とらいあんぐるハート2さざなみ女子寮」、2000年2月25日にはファンディスク「とらいあんぐるハート ラブラブおもちゃ箱」、2000年12月8日「とらいあんぐるハート3 〜Sweet Songs Forever〜」が発売される。特に、「とらハ3」は恋愛要素だけでなく、バトル要素も組み込み、美少女ゲームでは珍しく主人公が強くて魅力あるゲームであった。また、人気音楽ユニットのI'veを起用し、当時としては珍しいゲーム中に挿入歌を組み入れたことで、美少女ゲームは新たな展開を見せる。

 その後、2001年6月29日にファンディスク「とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱」が発売し、この中には「とらハ3」のスピンオフ作品の「魔法少女リリカルなのは」が収録された。主人公の義妹である高町なのはが主人公のこの作品は「とらハ3」のネタから生まれたものだったが、ファンの声に答え、収録された。
 ファンディスクの小ネタにも関わらず、ボリュームがあったことや、ストーリー中、性的描写がなかった(ただし後日談にはある)ことなど、純粋な魔法少女を描いたことが評価された。

 後に、とらハ3は一般向けのOVAにもなり、2003年にキングレコードから「とらいあんぐるハート 〜Sweet Songs Forever〜」が発売された。その後、スピンオフ作品である「魔法少女リリカルなのは」が2004年10月からアニメ化され、「魔法少女リリカルなのはA's」「魔法少女リリカルなのはStrikerS」と続く。原作とは大きく設定やキャラクターが変わり、ほのぼの恋愛から過激な魔法少女モノへと変化したが、それが高評価を受けた。「とらハ3」のバトル要素が「魔法少女リリカルなのは」に受け継いだ意味では、「とらハ」の匂いを残しているかもしれない。

 ・ 問題作「はじめてのおるすばん」

 児童ポルノ問題がまだ今よりも問題視されていない時代、2001年12月28日、ビジュアルアーツ傘下のブランドZEROが送り出した「はじめてのおるすばん」が発売した。どうみてもそれは年少の少女にしかみえないキャラクターの恋愛アドベンチャーに発表された当時は話題となった。
 発売した当初売れ行きは好調で、「はじめてのおるすばん」を求める難民が出てくるほどだった。よくクーラーが壊れるゲームでもあった。

 ゲーム冒頭で「この作品はフィクションなの。でね、登場する人名、団体名、地名、職業などは、ぜ〜んぶぅ、架空のものだよ〜。だからね、おにいちゃん、実際のものとは関係ないの。んとねぇ、んとねぇ、作品中に出てくる人物は、みぃんな、18歳いじょうだよ。過激な性的、暴力的表現、行為は絶対マネしちゃだめだからね!」と注意している。
 一旦、ギャグではあるが、色んな意味で問題性のあるゲームはこういった注意書きを最初の冒頭でするようになったのは、はじめてシリーズがさきがけといえよう。

 他にも、ニトロプラスの「Phantom 〜Phantom of inferno〜」やCIRCUSの「水夏〜SUIKA〜」、Leafの「こみっくパーティー」など、美少女ゲームはメーカーごとに特色のあるジャンルを生み出していく。
 そんな多彩なジャンルが出てくる中、Keyは独自の路線を行き、2000年9月8日に18禁Windows用ソフト「AIR」が発売した。

 ・ AIR

 恋愛アドベンチャーゲーム。冬の色を強く出した「Kanon」とは違い、今作は夏の海辺の田舎町で偶然出会った少女達と過ごす一夏の物語である。

 人形遣いである青年、国崎往人が「この空のどこかにいる翼の生えた少女」に出会うために、一人旅をする中、ヒロインの神尾観鈴と出会い、彼女の家に居候することとなる。

 オープニングテーマであるLiaが歌う「鳥の詩」は、未だに美少女ゲームに語り継がれている名曲であり、アメリカ、ロサンゼルスでレコーディングしたことでも有名である。Keyが作り出す独特の雰囲気は音楽から来ているのかもしれない。
 また、この頃からKeyは「Key Sounds Label」というレーベルを所有し、Keyが製作した美少女ゲームやリミックスの音楽CDを、アニメショップ・パソコンソフトで取り扱うようになった。
posted by 宋江 at 01:24 | game | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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